エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
心残りがあるとすれば、百合さんと直接話したあの時、彼女が過去におかしたらしい“裏切り”について聞くのを忘れたことくらいだけれど……。
本人があんなに強く一誠さんとの復縁を望んでいるのだから、今はもう関係のない事なんだろう。
そう、他人事のように思うことで、失恋の痛みをやり過ごして数日。カレンダーは五月に変わった。
ゴールデンウィーク明けには例の出張授業があるため、祝日の合間の平日もわりと忙しく、私はその日もオフィスで残業していた。
「ああ~! もう、ダメなんだってばこういうちまちました作業……!」
けっこう大きめの声で嘆きつつ悪戦苦闘しているのは、出張授業で使う教材づくり。
小学生の子どもが見ても触っても楽しめるように、フェルト生地の中に綿を入れて縫い付け、さまざまな食材のぬいぐるみを作っているのだ。
今回の授業で扱うエナジードリンクの効果は、あくまで一時的なもの。
大事な試験や部活動の試合で、ここぞというときに力を発揮したければ、やっぱり大切なのは規則正しい生活習慣と、栄養バランスの良い食事をきちんと三食とること。
その説明をするのに、このぬいぐるみを使うのだ。しかし……。