エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
やばっ。まだ仕事終わってないのにだらけてる姿見られたかな……。
「な、成田くん……! どしたの、忘れ物?」
急にシャキッと背筋を伸ばし、笑顔を取り繕って振り返る。
成田くんは少し気まずそうに「はい」と苦笑した後、ゆっくり歩み寄ってきて、私の隣の席、露子のデスクに座った。
あれ? そこは、きみのデスクじゃないけど……。
不思議に思っていたら、彼は犬のような、人懐っこい笑みを浮かべて言う。
「忘れ物は、汐月さん」
「へっ……?」
意味が分からなくて、間抜けな声を出してしまう。そんな私に、成田くんはふっと笑って、説明してくれる。
「それ、苦労してるだろうなと思って……だから、戻ってきました」
“それ”と言いながら彼の視線が向いた先は、私のデスクに散乱する、フェルトや綿や、裁縫道具。
「もしかして、手伝ってくれるってこと……?」
昼間『大丈夫』と強がった私はどこへやら。先輩としてのプライドなんか皆無の、すがるような瞳で彼を見つめる。