エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「わ、私、もう食べ終わりましたけど」
「なにも、食べるだけがランチじゃないでしょう。話し相手になってください。僕たち、お互いのことをまだ知らなすぎますし」
そう言って、先にベンチに座った彼が、自分の隣のスペースををぽんぽんと叩く。
優しいふりして、意外と強引だよねこの人……。私は彼の方をあまり見ないようにして、渋々ストンと腰を下ろした。
「じゃあ、まず……巴の趣味は?」
部長の口から出た一発目の質問に、がくっと肩の力が抜けた。
「なんですかそのお見合いちっくなつまらない質問」
「つまらなくないですよ。心から知りたいんです。趣味、性格、嗜好……きみのことはとにかくなんでも」
昼間の部長はこのあいだの夜とは違って、穏やかな顔つきをしている。屋上に吹く風にサラサラ揺れる黒髪も爽やかで、そんな好青年風の部長になんだか調子が狂う。
「……映画鑑賞、ですかね」
「いいですね。じゃあ今度一緒に行きましょう」
「えっ。ひとりで観るのが好きなんですけど」
……と、いうのは嘘だ。単に、元カレと別れてから一緒に行く人がいなくなって、ひとりで行くことが当たり前になっているだけで。