エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「そうか……残念だな。一緒に同じものを観て、泣いたり笑ったり、感想を言い合ったりするのも、恋人として距離を縮めるのに有効かなと思ったんですが」
あ……その感覚、わかる。
同じポップコーンのカップに手を入れながら、ハラハラするシーンで一緒に息を呑んで、手に汗を握って。ラブシーンでは、どんな顔してるかなって気になって隣を見たら、目が合ってなんだか気まずかったり。
最近そういうドキドキとは、ずいぶんご無沙汰だけど……そっか。こういう時に、部長のことを頼ってみればいいのかな。
映画を見るだけならデートとしてのハードルも低そうだし、リハビリの第一歩にはちょうどいいかもしれない。
「……見ます? 一緒に、映画」
「いいんですか?」
「はい。恋人同士……ですから」
わざとらしいその“恋人同士”という言葉が、私たちの関係を軽くしてくれる気がした。
所詮、遊びで、偽物の関係だけど。だからこそ、恋人らしい時間を過ごすこと、素直に楽しもうと思える。
「ありがとう。じゃ、詳しいことはまた連絡します」
部長がうれしそうに目元を緩めるのを見て、胸がほっこりと温かくなる。
たとえ偽りの関係でも、こういう気持ちになれるのは悪くないよね。
短い時間だったけれど、部長と話しているうちに不思議と感じていた孤独は薄れ、なんとなくだけど、彼との関係を前向きに考えていけそうな気がした。