エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「それではデートになりません」
「や、だって、今夜眠れなくなっちゃいそうだし……」
一緒に見るのがスリラー映画じゃ、そもそもデートっぽくならないでしょうし……。
私はけっこう本気で嫌がっているのに、部長は説得をやめてくれない。
「眠れなければ、僕が添い寝してあげます」
「そ、それはそれで眠れませんし……」
「ごちゃごちゃ言ってないでほら、行きますよ。観念してください」
「いやあああああ……」
必死の抵抗もむなしく、引きずられるようにしてスクリーンの方へ拉致された。
ポップコーンを二人で分け合い、ラブシーンで若干気まずく……なんていう、想像していた甘めのデート展開がガラガラ音を立てて崩れていく。
いざ席に着いて辺りを観察すると、レイトショーだからかお客さんは少なく、デートにはもってこいの環境だった。
なのに、これから始まるのは狂気じみた連続殺人の映像だなんて……。
私は結局予告編だけを見て、それ以外はほとんど目をつぶり、両手で耳をふさいでいた。
ときどきそうっと目を開けて隣に座る部長を見たけど、なぜか毎度のように目が合って、満足げな笑みを向けられた。
このひと、そんなにスリラー映画が好きなの……? もしや、恋人として私を散々甘やかした後で殺す気なんじゃぁ……!