エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
部長の予約した和食のお店は静かで居心地よく、お料理も美味しかった。
私は先日の失態もあるし、今夜はこれから映画も控えているのでお互い一杯だけお酒を飲んで、ほどよいフワフワ感で映画館に移動した。
しかし、部長の映画のチョイスが個性的すぎるせいで、一気に酔いがさめることに。
「な、なぜ……これなんですか」
映画館の薄暗いロビー。そこで彼の手から受け取ったチケットに印字されたタイトルを見て、冷や汗をかく。
映画なら私はわりとオールジャンル見られるほうだけど、どうしても苦手なものがあるのだ。
「ダメですか? スリラー映画は」
すがすがしい笑顔で問われても、昔からホラーとスリラーだけはダメ……。
私は恨めし気に彼を見上げた。
「ミステリーとか、サスペンスならまだいいですけど……完全に怖い奴やつですよね?【隣人の狂気~14人目の被害者~なんて】、一本の映画で確実に14人死ぬじゃないですか!」
「でもフィクションですよ?」
「フィクションだろうとなんだろうと関係ありません! 私、ここで待ってますから部長おひとりで……」
そう言って逃げ腰になって一歩下がった私の手首を、部長がむんずとつかんだ。