エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~

気軽なパーティーだとは聞かされていたけど、ホントにプライベートなお祝いなんだ。

なんとなくホッとしていると、一誠さんが隣で少し困ったような笑みをもらす。

「だから、パートナー同伴を指定してきたのだと思います。子どもを持つことは素晴らしい。きみたちも早く、親に孫の顔を見せてあげなさいと言いたいのでしょう」

「なるほど」

年配の方にありがちな、ちょっと困ったお節介を焼きたいわけだ。でも、先にそういう情報を与えられていれば、もしご本人に同じことを言われたとしても愛想笑いでやり過ごせるかな。

やがて、ステージ上に主催者のイベント会社社長、水野清彦(みずのきよひこ)さんが登場した。六十代後半くらいの、にこやかで感じのいい男性だ。

彼の話は一誠さんが予想した通り、孫の可愛さから始まり子育ての楽しさ、親の責任、そして最後にやっぱり予想通りのお節介発言をしつつ、乾杯の音頭を取った。

一誠さん曰く、この後は自由に立食を楽しむだけでいいらしい。

「社長の代理なのに、いいんですか? いろんな方にご挨拶しなくて」

「……ええ。今日はいいんです。余計なことを言われるだけですから」

余計なこと? 水野社長のようなお節介が面倒ってことかな……?

< 95 / 188 >

この作品をシェア

pagetop