エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
疑問に思いつつも、一誠さんがいいと言うのでしばらく二人だけでひっそりお料理とお酒を楽しんでいた。
でも次第に周囲の異変に気付き、なんだか居心地が悪くなってきた。
「あの……気のせいじゃなければ、皆さんに見られているような……」
ちくちくと、全身に刺さるおびただしい数の視線に気づき、私は一誠さんを不安げに見上げる。
「全く、嫌な感じですね。巴は気にしなくて構いませんよ」
「でも……」
視線と言っても好意的なものではない。私たち……ううん、私のことを見ては、皆ひそひそと悪い事を噂しているような、そんな顔をしていて……。
徐々にふくらんでいく不安に押しつぶされそうになるなか、私たちに三人の若い女性集団が声を掛けてきた。
「こんばんは、青柳(あおやぎ)さん」
「ご無沙汰してます青柳さん」
「青柳さん、百合さんはどうされたの?」
彼女たちはなぜか一誠さんを青柳さんと呼び、その瞬間彼の瞳が鋭く細められたのを私は見逃さなかった。
青柳……というのは我らがコバルト製薬社長の苗字だけれど。
代理とはいえどう見ても一誠さんは本人じゃないのに、どうしてその名前で?
それに、“百合さん”って……前にもどこかでその名を聞いたことがあるような。