さようなら、初めまして。
「どうかした?」

…あ、いけない。

「なんでもないです、ごめんなさい…」

ジンさんは今日も先に来て待っていてくれたんだと思った。まだ遠い場所を歩いていた私に、待ち合わせの場所の方から声を上げ、人を掻き分けるようにして駆け寄ってくれた。…アイちゃ~んて。
そして、徐に手を繋ぐと、今日はこっちだ、と、このお店に連れて来られたんだ。
…あっ、て、一度、触れた手を引きかけたら、返ってしっかり握られた。
ここは知ってる。…よく、知ってる。ロールキャベツが美味しいお店だ。
だから、お店が見えた時から、色々と、どうしても考えてしまっていた。どうしてここ?だとか、でも結局、みんな行くところは同じなのかも知れない、とか。そんなに大きな街ではないから、ちょっとお洒落だとか、推しのメニューがある飲食店といったら、限られてくるのかも知れない、だとか。…でも。
こうも、行く先々のお店が全部同じってあるんだろうか、と、どうしても思ってしまう。
しかも、順番通り、なぞるようにだから。

「…やっぱり、んー、無理?」

「…え?」

何がだろう。

「こんな風にご飯する事。全てにおいて、俺、強引だから」

あ。嫌がってると思わせたのかも。

「違います、それは違うんです。…嫌じゃない…無理とか、違います、嫌なら来てないです。…来なければいいんですから」

連絡せずにドタキャンなんて…それって酷いけど。でも、迷惑ならそうしてると思う。…でも、そんな事はしない、…してはいけない。黙って約束に来なければ、相手は心配してしまう。

「あ、そうか。いや…でも、行かなきゃまずいかもって、取り敢えず的に来てくれたかも知れない」

それは人としてって事だ。

「違…、それとは違います、本当に違います」

「じゃあ、いいのかな」

でも、上の空みたいな態度では気が乗らないのに合わせてるんだと思わせても仕方ないかも…。それも、会えば会うほどにだから。無理につき合ってるんだって、ジンさんが思うのも当然だ…。ジンさんに関係なくても、私のこの態度は失礼だから、…話した方がいいのかな…。

「あの、ジンさん、私…」

「お待たせしました」

あ、…タイミングが…。
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