死にたがりティーンエイジを忘れない
教室に着くや否や、ひとみがわたしのところに飛んできた。
「おはよ、蒼ちゃん!」
「うん。早いね」
「早いでしょー。あたしの下宿屋さん、学校のすぐそばだから、登下校がすごく楽なんだよ」
「そうだよね。あのさ、今週の日曜の夜にごはん食べに来ないかって、うちの親が言ってたよ」
「行かせてもらいまーす。雅樹くんもだよね?」
「うん。でもそれ大声で言わないで」
「あっ、ごめん」
わたしが戸惑ったことに、ひとみは四六時中、わたしと一緒にいたがった。
中一のころまでは、ここまでベッタリじゃなかったはずだ。
木場山の小さな小学校では、子どもたち全員が仲のいい兄弟姉妹みたいな雰囲気だった。
寂しがりやがいたとしても、心を埋めるために誰かと特別にベッタリになる必要はなかった。
その和気あいあいとした空気は、中一のころもそうだったと思う。
ひとみは今、天真爛漫な様子を見せてはいるけれど、慣れない環境の中で本当は不安なのかもしれない。
だから、寄り掛かれる誰かを求めているのかもしれない。
まずいな、と感じた。
わたしは、寄り掛かられたときに支えられるほどには、きちんと立っていない。
だいたい、今のわたしは、ひとみが知っているわたしじゃないんだ。
わたしは強くもないし、優しくもない。