死にたがりティーンエイジを忘れない
笑いが起こった。
どこか張り詰めていた教室の空気がなごんだ。
ひとみは癒し系というか愛され系というか、マスコットや小動物みたいに、場の緊張を解きほぐす力がある。
本人は自覚していないようだけれど。
雅樹も隣のクラスで同じように、いなかから出てきた純朴な努力家って感じのキャラづけを獲得したのかな。
あいつは絶対つまずいたりしないだろうな、と思う。
家に帰って、春休みの課題の答え合わせをした。
数学は間違いだらけだった。
やり直しの量がものすごくて、睡眠時間が削られた。
自己採点のスコアの低さが衝撃的で、現実としてちょっと受け入れられなかった。
おかげで、悶々として眠れなかった。
バスで登校する。
朝の便の路線は智絵の家のそばを通る。
わたしは窓から顔を背けた。
明日からは反対側を向いて立とう、と決めた。
智絵は通信制の高校に受かった。
春休みに一度だけ電話でしゃべったとき、制服はないと聞いた。
入学式には頑張って出ようかな、と智絵は言っていた。
行ったんだろうか。
話せる相手がいただろうか。