死にたがりティーンエイジを忘れない


部誌が配布されたのは文化祭の日だった。

一年のころの文化祭は、クラスで何をしたっけ?

記憶にない。

わたしは確か欠席した。


今年は一応、お化け屋敷だ。

とはいえ、きっちり準備するほどの時間なんて進学校には用意されていないから、模造紙に世界各国のお化け事情をまとめて教室内に展示した。


教室内の飾り付けには、私物の黒猫やこうもりのぬいぐるみが動員された。

それの盗難を防ぐため、教室で見張りをする当番が組まれた。

わたしはくじ引きで負けたせいで、午後の最後のコマに教室に張り付くことになった。


わたしの当番の時間帯は、目玉となるステージ企画のタイミングと重なっていた。

おかげで来場者はほとんどいなくて、わたしはガランとした教室で本を読んで過ごした。


もう少しで時間終了というころになって、雅樹が一人でふらりと教室を訪れた。


「蒼、これ読んだよ」


雅樹は文芸部誌を手にしていた。


「普段、漫画しか読まないくせに」

「文章の本も読むよ。ノンフィクションばっかだけど。で、これはノンフィクション?」

「何でそんなこと訊くの?」

「すげーリアルに書いてあるから。今までの蒼の小説は作り物って感じがあったけど、今回のは違う。あっちで出会いでもあった?」


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