死にたがりティーンエイジを忘れない


からかうような薄い笑みが雅樹の頬に浮かんだ。

陸上部だから、よく日に焼けている。

雅樹の口元にうっすらとしたひげの剃り跡があることに、わたしは初めて気が付いた。


雅樹は、背丈はそう高くない。

でも、一つ下の竜也よりは高い。

竜也は、細く締まった筋肉の感じも、まだちょっと幼かった。

制服だったら、きっと肩回りなんかがぶかぶかだろう。


とっさに頭に浮かんだ竜也の姿を、かぶりを振って追い払いながら、わたしは雅樹に答えた。


「ノンフィクションだけど、わたしじゃないよ」

「ふぅん。だったら別にいい」

「いいって、何が?」

「両想いでも国境またいでるとか、どう考えても悲惨だろ。時差もあるから、電話だってかけにくい。あと半年で受験生になるってのに、遠距離恋愛なんてやってる余裕ないじゃん」

「急に変なこと言い出さないでよ」

「変かな」

「変だよ。何かあったわけ?」


雅樹は奇妙に明るい表情で大げさに肩をすくめた。


「今日、おれ、デートだったんだよ。部活の先輩の女子に約束させられてたわけ。一緒に展示を見て回ったりして。で、予想はしてたんだけど告白されて、半年後には遠距離になる見込みだけど付き合いたいって。ちょっと考えて、ごめんなさいっつって泣かせてきた」

「笑顔で報告することじゃないでしょ」


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