死にたがりティーンエイジを忘れない


オープンキャンパスの様子を、竜也に聞いた。

自由に選べる模擬授業がおこなわれたり、研究室に出向いて話をきいたり、といったイベントがあったらしい。

噂に聞いていたとおり、響告大学の研究者や先生方はとてもマニアックで、頭のねじが飛んでいた、と竜也は笑う。


わたしは去年、オープンキャンパスに参加しなかった。

受かる見込みが低すぎて、志望校を意識したくなかったんだ。

意識したら、プレッシャーに押しつぶされる気がした。


竜也も、もともとは、オープンキャンパスにはあまり興味がなかったそうだ。

でも結局、わざわざ来た。


「おれの行動原理って、場所じゃないんですよ。人なんです」

「行動原理?」

「つまり、オープンキャンパスで言えば、受験のとき迷わないように下見するとか、そういうんじゃないんです。この先生の講義を聞いてみたいって人がいたし、蒼さんにも会えるしってことで、響告市に来てみたくて」

「人に会うため……」

「そう。おれ、基本的に、人間ってものが好きなんだと思う。もちろん、苦手な人やうまく仲良くできない人とか、いますけどね。でもまあ、割とどんな人でも、おもしろいとこ持ってる人だなって思えますよ」

「わたしとは正反対だね」

「そうですか? 蒼さんは警戒心が強いかもしれないけど、人嫌いではない感じがしますけどね」

「まさか」

「警戒心が強い人ほど優しくて、人を傷付けたくないから人を近寄らせないって、そういうとこ、あると思いますよ」


わたしはかぶりを振った。

嫌いだった。

何もかもが嫌いで、憎む気持ちばかりを抱えてきた。


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