死にたがりティーンエイジを忘れない


〈ひとみとは連絡取ってないの?〉

「取ってない」

〈あいつのとこ、都会すぎてきついって。おれら、もともと木場山のド田舎育ちだからな。ひとみはけっこう精神的に参ってるみたいで、春休みはずっと地元にいるって言ってた。新学期から本当に大学に復帰できんのかな?〉

「一人じゃいられない子だからね」

〈だよな。新しいとこでも、蒼みたいな相手ができりゃいいのに〉

「わたしはあの子のこと支え切れないと思った」

〈蒼と正反対だよな。蒼はもっと誰かに支えてもらえよって感じ〉

「いらない」


雅樹は低い声で笑った。


〈変わってねぇな〉


それは間違っている。

わたしは変わった。

「勉強すること」を軸に、いびつな形をどうにか保っていた「わたし」という人格が、もうバラバラになってしまった。


小説を書いていない。

ギターを弾いていない。

本を読んでも、食べ物のことが頭をちらついて、すぐに集中力が切れる。

じっとしていることが苦痛で、食べたい吐きたいという衝動に、あっという間に呑み込まれる。


毎日、食べて吐いている。

「これを食べたらやせる」というダイエットの知識が増えて、その反面、口にしても吐かずに済むものの数がどんどん減っている。

もうめちゃくちゃだ。

空腹感も満腹感も、あるはずがない。


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