死にたがりティーンエイジを忘れない


絵を描くのは時間がかかる。

夏休みの間、わたしは智絵の作業を見る機会があった。

だから知っている。


智絵は、お気に入りのキャラクターの似顔絵なら、鉛筆をササッと走らせるだけで描き上げられる。

でも、色を付けた全身画は、構図を決める下絵を何度も描く。

時間をかけて、一つひとつの要素を決めていく。

複数人を配置する構図は、輪をかけて大変だ。


文化祭当日まで、あまり時間がない。

そんな状況で、智絵はいきなり、ドラえもんのメインキャラクターである子どもたち四人の絵を描くことになった。

サイズは模造紙二枚ぶん。

画材はアクリル絵の具。

もちろん、背景となる空き地の彩色も手を抜けない。


智絵は、担任から受けたイラストの注文をメモ帳に書き込んだ。

丁寧な字だった。


わたしは智絵に訊いた。


「手伝えること、ある?」


智絵は首を左右に振って、荷物をまとめて一人で教室を離れた。

まわりに誰かがいると、智絵はわたしとしゃべってくれない。


どうすればいいんだろう?

どうしようもないの?


智絵が教室から出ていくと、そのとたん、歓声のようなものが上がった。

手を叩いて笑い転げる女子の集団。


「担任公認で教室から追い出されたよ、あのゴミ!」


ターゲットがその場にいなければいじめが消えるはず?

担任は何を甘ったれているんだろう?


この人たちの場合、陰口も悪口も、本人がいないところでこそ、堂々と笑いながら盛り上がるものなんだ。


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