死にたがりティーンエイジを忘れない


智絵は文化祭の日を境に教室に来なくなった。

わたしと一緒に登下校するのも、智絵は「ごめんね」と断った。

わたしは「いいよ、気にしないで」と言うしかなかった。


教室に行けない智絵の逃避先は、保健室だった。

日直が智絵に給食と配布物を持っていった。


保健室には、教室に行けない生徒が二十人近くいた。

保健室からいちばん近い空き教室は、保健室登校の生徒の自習室だった。

智絵はそこで一人で勉強して、提出用の課題を解いた。

テストも自習室で受けた。


わたしは、空っぽになったみたいだった。

学校ではしゃべらなかったと思う。

出席日数は、欠席も多かったけれど、担任から警告されない程度だったはずだ。


ギターは部屋の隅でホコリをかぶっていった。

手の傷が治っても、弾く気が起きないまま、

いつの間にか寒い季節になって、年が明けて三学期になって、テストだらけの毎日の合間に誕生日が来て、三学期が終わった。


木場山のころの友達とは、もう完全に連絡が途絶えてしまった。

わたしが途絶えさせたんだ。

年賀状も出さなかった。


一九九九年。

ノストラダムスが予言したとおりに地球が滅ぶなら、中三の七月だ。


滅んでしまえ、と願った。

そんな中二の終わりの春休みだった。


< 58 / 340 >

この作品をシェア

pagetop