死にたがりティーンエイジを忘れない


机の上に現れる小さなドラゴンを描いている、と智絵は言っていた。

何でもない日常の風景の中に、不思議な生き物がいる。

そんな絵が好きだから、と。


上田はかぶりを振った。


「間に合わなかったみたい。準備室に置いてあるけど、色が載せられてないところがあるし、あせったらしくて塗り方のトーンがおかしいところもある。
残念だよ。下絵の段階では本当にキレイな作品で、ちゃんと時間があったらよかったのに」


智絵は泣いているだろうか。

怒っているだろうか。


誰が悪いんだろうか。

誰の責任なんだろうか。


どうしてこんなにうまくいかないの?

わたしはどこで、何を間違えたの?

何をやり直せば、わたしはまともな場所に戻れるの?


わたしは智絵と一緒に戻りたい。

呼吸をするだけで重労働の、こんな場所にいたくない。


でも、そんな簡単なはずのことが、わたしにはできないんでしょう?

智絵にはできないんでしょう?

どうして、学校というこの世界はこんなにも不公平なの?


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