死にたがりティーンエイジを忘れない


短くて重たい電話を終えた。

わたしはそのまま呆然と座り込んだ。


わたしに何ができるんだろう、と考えた。

智絵のために何かできないだろうか。

わたしにできることって、何だ?


智絵は、わたしに会える状態じゃなくても、わたしの小説だったら読んでくれるかな?

喜んでもらうこと、できないかな?

一時でもいいから現実を忘れるための助けにならないかな?


始業式の日、一人で登校した。

生徒玄関の前に人だかりができていた。

クラス分けの表が貼り出されているせいだ。


授業中にだけ掛けるメガネをカバンから取り出して、レンズ越しに人の頭の後ろから、クラス分けの表を見る。

智絵とは別のクラスになっていた。


二年のころのクラスで幅を利かせていたグループはみごとにバラバラになったらしい。

ぎゃーぎゃー騒いでいる人たちに巻き込まれないように、わたしは人だかりから離れた。


三年の靴箱の場所がわからなくて、ちょっと迷う。

一年のころからいたわけじゃないから、琴野中の常識がわたしには欠けていて、不便だなと、ときどき感じる。

智絵がいたら、教えてくれたのだろうけれど。


< 60 / 340 >

この作品をシェア

pagetop