死にたがりティーンエイジを忘れない


ふと、呼ばれて顔を上げた。


「蒼さん」


上田がいた。

わたしはちょっと目を合わせて、すぐに顔を背ける。


わたしの苗字はかぶっている人が多いせいで、誰もがわたしを下の名前で呼ぶ。

それがいつまで経っても、慣れない。

新しいクラスでも、やっぱり同姓の人がいた。

名前呼びは変わらないんだろう。


上田は、微笑みを含んだような声で言った。


「また同じクラスだよ。靴箱、こっち。三年の玄関、奥まったところになってるから、最初はわかりづらいよね」

「……ありがとう」

「メガネ掛けてるの、珍しいね。普段は、授業中だけでしょう? 席が近い人しか知らない、レアな姿だと思ってた」


クスクスと笑う上田に、わたしはどうすればいいかわからなくて、メガネを外してたたんで、セーラー服の胸ポケットに突っ込んだ。

ポケットに縫い付けた名札の端っこが少しほつれているのが見えた。

糸くずをつまんで、ちぎる。


上田がまた唐突なことを言った。


「友達を待ってるんだ。小学校のころの親友で、塾ではいつも会ってたんだけど、久々に同じクラスになれた。もうすぐ来るだろうし、何となく、待ってようかなって思って」

「そう」

「菅野っていって、去年は隣のクラスだった。小柄で、野球部で、たまにうちのクラスに遊びに来てたんだけど、わかる?」

「さあ?」


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