死にたがりティーンエイジを忘れない


上田はそっと笑った。


「感覚がずれてる先生、この学校には多いよね。今年のうちのクラスは当たりだと思うけど。去年が今の担任だったら、ちょっとマシだったかな?」

「今さらそんなこと言ったって仕方ない」

「確かに。引き留めてごめん。あの子によろしく。ぼくは何もできないから」


上田はささやくように言った。

智絵のことを気に掛けているのは本当なのかもしれない。

文化祭が近付いてきたせいで、上田も去年のことを思い出してしまうのかもしれない。


わたしは、ふと気が付いた。

二学期に入ってから、智絵の家に行く回数が減っている。

行事が多くて授業の進みが遅いせいもあるけれど。


わたしは智絵のことを忘れようとしているんじゃないだろうか。

時間が降り積もるにつれて、自分の感覚が鈍っていくのがわかる。

去年はハッキリと感じていた拒絶を、今年はもうあきらめているところがあって、受け入れて耐えている。


なじみたくない世界に埋もれていく。

それはイヤだ。

でも、智絵のところに一緒に沈んでいくわけにもいかない。

わたしは、病みたくはない。

それは智絵への裏切りに近い気持ちではない?


電話をかけなきゃ。

智絵と話をしなきゃ。

胸にあせりを覚えて、わたしは家路を急いだ。


< 91 / 340 >

この作品をシェア

pagetop