死にたがりティーンエイジを忘れない
上田はそっと笑った。
「感覚がずれてる先生、この学校には多いよね。今年のうちのクラスは当たりだと思うけど。去年が今の担任だったら、ちょっとマシだったかな?」
「今さらそんなこと言ったって仕方ない」
「確かに。引き留めてごめん。あの子によろしく。ぼくは何もできないから」
上田はささやくように言った。
智絵のことを気に掛けているのは本当なのかもしれない。
文化祭が近付いてきたせいで、上田も去年のことを思い出してしまうのかもしれない。
わたしは、ふと気が付いた。
二学期に入ってから、智絵の家に行く回数が減っている。
行事が多くて授業の進みが遅いせいもあるけれど。
わたしは智絵のことを忘れようとしているんじゃないだろうか。
時間が降り積もるにつれて、自分の感覚が鈍っていくのがわかる。
去年はハッキリと感じていた拒絶を、今年はもうあきらめているところがあって、受け入れて耐えている。
なじみたくない世界に埋もれていく。
それはイヤだ。
でも、智絵のところに一緒に沈んでいくわけにもいかない。
わたしは、病みたくはない。
それは智絵への裏切りに近い気持ちではない?
電話をかけなきゃ。
智絵と話をしなきゃ。
胸にあせりを覚えて、わたしは家路を急いだ。