シンデレラは騙されない


それからはあまり会話もせずに黙々と仕事をした。
ここしばらくはあまり残業ができないと以前に伝えておいたせいで、佐々木さんも私に合わせてくれる。

佐々木さんは、私にとっては全然悪い人じゃない。
彼もある意味、ギャップを持った男。
私以外の皆には興味も持たない冷たい男なのに、私だけには笑顔と優しさを見せてくれる。

もしかしたら、いつかは好きになった人なのかもしれないけど、今の私にはそんな心のすき間はない。
だって、凛様の存在が大き過ぎるから…

「麻木さんは…」

入力の合間の休憩の時に、佐々木さんが何かを聞いてきた。

「麻木さんは…
今、つき合っている人とかいるの?」

隣に座る佐々木さんの距離が急に縮んだ気がした。

「い、いや、いません…」

「そうなんだ」

何がそうなのかは分からないけれど、とりあえずその話はそこで終わった。
私は持参したマイボトルの麦茶を飲んで、また仕事に取りかかる。



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