シンデレラは騙されない
凛様とは会社の前のコンビニで別れた。
別に誰に見られても問題ないと堂々とすればいいのに、そうできない自分が本当に嫌になる。
私は時計を見て、ちょっと急いで職場へ戻る。
一時間弱のランチタイムは、心身ともに疲れ果てた。
専務からの電話がくるまでは、だけれども…
「お疲れ様です。麻木さん、いますか?」
そうやって他の皆に挨拶もせずに私めがけて入ってくるのは、佐々木さんの悪いところ。
でも、誰も何も言わない。
それは、佐々木さん自身が、彼と関わりたいと思わせる人間じゃないから。
私と佐々木さんは、在庫管理専用のCSのあるスペースへ移動した。
いつも思うのは、何でもう一人横浜の人間を連れて来ないのだろうという事。
横浜支店は神奈川と静岡にある全店舗の在庫をとりまとめている。
それだけ件数が多いのは分かっている事なのに、私をあてにしているところがちょっと腑に落ちなかった。
佐々木さんは奥にあるCSの部屋へ入ると、すぐに笑顔になる。
そして、持って来た中華まんを私に手渡した。
「ありがとうございます…」
4個入った大きめの中華まんはわざわざ中華街から買ってきたものだ。
佐々木さんは満足げに頷いて、そして照れくさそうに笑う。