シンデレラは騙されない


「ホテルを取ってある…
いかがわしいホテルじゃなくて、ちゃんとしたホテルだから」

私は可笑しくてまたクスッと笑った。
そんな笑うような状況じゃないのに。

「今、麻里が心配している事は…
私はどこに泊ればいいの?だと思うけど、大丈夫。
ちゃんと麻里の部屋もとってある。

俺と一緒の部屋だけどね」

凛様はそう言うと、私の方をチラッと見て笑顔になった。
そして、そのまま高速道路に車を走らせる。

何も言わない事は卑怯な人間のする事なのかもしれないけど、でも、今は何も言いたくない。
言ったところで解決できるような話ではないし、解決できない話をして険悪になりたくないから。

今日だけは、このひと時だけは、心の赴くままに過ごしたい。
それが許される事を信じて…

凛様が向かっているホテルが見えてきて、私は瞬きをするのを忘れてしまった。
そこは超一流と言われている外資系の有名なホテルだったから。






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