シンデレラは騙されない


私は本物のお金持ちの家に足を踏み入れてしまった。
きっと、私の常識では理解できない世界がそこにある。

暴れる心臓をなだめたくても何もいい言葉が浮かばない。

……麻里、いいチャンスをもらったと思えばいい。
こんな稀有な世界を覗き見るなんて、めったにない事だから。

そして、母屋と呼ばれる白亜の豪邸が、私を待ち受ける。
私はその迫力に負けないよう、もう何も考えずにまたインターホンを押した。

すると思いのほか、玄関の扉がすぐに開いた。

「いらっしゃいませ、麻木様。
お待ちしておりました」

床は大理石、周りはアンティーク風の古いオーク材で形づくられた玄関、入った正面に見える大きな窓からのぞく中庭の美しさに、私はため息しか出ない。

そして、何より驚いたのは、私を迎え入れてくれた人達…
可愛らしいメイド風の格好をしたお手伝いさんが二人、満面の笑みを浮かべて私の荷物を受け取り、「こちらへどうぞ」と手招きをしていた。



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