シンデレラは騙されない


「あ、はい…」

私はそう返事するしかできない。
あまりにも自分の世界とかけ離れた世界にまだ体と頭がついていかない。

玄関から右側に曲がった廊下の先には、両面開きの上質で贅沢な扉が私達を待っていた。

「奥様、麻木様をお連れしました」

年配の方のお手伝いさんがそう言うと、若い方のお手伝いさんがその扉を静かに開ける。
そして、二人は私を中へ入るように促すと、また静かに扉を閉めた。

「麻里さん、いらっしゃい。
ちゃんとここへたどり着けるか心配していたのよ。
ほら、そんなところへ立っていないで、ここへお座りなさい」

私はきっと顔面蒼白になっている。
このリビングの豪華さもそうだけど、それよりも私の目の前に座っている美人すぎる会長の娘さんと、可愛いイケメンすぎるその息子さんの星矢くんに目と心を奪われてしまっている。

「星矢、この方が星矢の家庭教師になる人よ」

星矢君は恥ずかしそうに私の手を握ってきた。

「麻里さん、星矢です。
よろしくお願いします」



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