シンデレラは騙されない
私は一つ一つ丁寧に答えた。
この斉木家の人々に悪い人はいない。
綾さんの穏やかな笑顔に私も癒されつつ、私は星矢君の家庭教師としての責務を果たすだけ。
「麻里さん、実はね…」
綾さんはそう言って、すぐに口を手で覆った。
「あ~、早く言いたくてたまらないけど、まだ時期じゃないみたい」
私が意味が分からなくてポカンとしていると、綾さんはごめんなさいねと謝った。
でも、その顔には幸せそうな笑みがこぼれている。
「突然、お願い事をするかもしれないけど、それは私の真心がこもってるという事を忘れないで。
あ、でも、強制じゃないからね」
私は本当に意味が分からない。
あまりに分からな過ぎて、綾さんの笑みに釣られて私も笑ってしまう。
「星矢がいつも麻里先生の話をしてくれるの。
麻里先生、大好きって」
私は嬉しくて顔を赤らめる。
「私も麻里さんの事大好きよ。
星矢の大切な時期に、こんな形で留守番にしてしまって…
でも、麻里先生のおかげで、私も救われてるの。
本当にありがとう」