シンデレラは騙されない


「実は、前に凛太朗君にきつく言われた事があって…」

斉木家の人って何でこんなに優しいんだろう。
私を傷つけないように必死に言葉を選んでいる。

「前に、僕が、二人が食事をしてるところに電話をした時があっただろ。
あの後、珍しく温和な凛太朗君が、僕に牙を剥いた。

麻里を傷つける事は俺が許さない。
それが、たとえ家族であってもってね」

私は下を俯いたまま、顔を上げる事ができない。
専務の苦しみが痛い程伝わってくるから。

「麻里ちゃんと凛太朗君の事は、綾もお義母さんも知らない。
お義母さんは麻里ちゃんと凛太朗君の仲がいいのは、アメリカの高校が偶然一緒だったって事で納得してる。

僕もあえて言ってない。
言う必要はないと思っていたし、結婚まではいかないだろうと思ってるから。
きつい言い方だけどね」

私は小さく頷いた。

「今回のお見合いの話も僕の知らないところで綾が進めてたんだ。
綾もお義母さんも、麻里ちゃんの事を心配してるし何とかしてあげたいって心から思ってる。
とってもいい子だから、幸せになってもらいたいってね」

涙が一滴頬を伝い落ちる。
それは言われなくても分かっています…



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