シンデレラは騙されない


星矢君は綾さんの膝の中で、うんと頷く。

凛太朗は、きっと、この家の長男で一人息子。
この話の感じだと、仕事で海外あたりにでも出張しているのかも。

「麻里さん、着いたばかりで申し訳ないのだけれど、私はもうすぐ空港へ向かわないといけなくて、先に、麻里さんのお部屋に案内するわね」

そう言って綾さんが席を立った時、玄関の方じゃなく隣にあるキッチンルームの方でバタンと大きな音がした。

「凛様…?」

真っ先に顔を赤らめてそう言ったのは二人のお手伝いさんで、その後に星矢君が「凛太朗?」と大声で叫んだ。

その凛太朗という人は、どうやらこの家では欠かせない人気者らしい。
お手伝いさんに星矢君、そして、会長も綾さんも顔がほころんでいるから。

星矢君はすぐにキッチンの方へ走って行く。
お手伝いさん二人も、恐る恐るその後を付いて行く。

私は訳が分からずにその成り行きを見守っていると、キッチンの方で「おかえり~」と興奮状態の星矢君の声が聞こえてきた。



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