シンデレラは騙されない


平塚さんに連れて来てもらったお店は、このホテルに何軒か入っているミシュランに選ばれた三ツ星レストランの一つだった。
そして、平塚さんが顔を出した途端、すぐに奥にあるVIPルームへと案内された。

その個室は全面窓ガラスの開放的な部屋だった。
モノトーンを基調としたシンプルな部屋で、窓の向こうの景色は、暮れ始めた紫色の夜空とビルの明かりのコントラストがすごく綺麗。

二人掛けのテーブルに腰掛けた私達に、シェフがじきじきに料理を運んできてくれる。
平塚さんは他愛もない話で私を盛り上げてくれた。
凛様の話には全く触れない。
私は食事を済ませてからちゃんと自分の想いを伝えたいと思っていた。

食後のデザートが運ばれてきた時に、私は勇気を出して口火を切った。
その事を伝えるために、今日、ここへ来たのかだら。

「平塚さん、あの、私…
私は、誰とも結婚するつもりはありません。
凛様の事は本当に好きで一緒にいたいと思うけど、でも、結婚は望んでいません。
望んではいけない人だって、ちゃんと分かってます。

だから、平塚さんとも、綾さんの紹介なので、こういう形でお会いしましたが、私は誰ともつき合う気はありません。

ごめんなさい…
今日はそれを伝えるために、ここに来ました」



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