シンデレラは騙されない


平塚さんはそんな私を真っ直ぐに見ている。
その視線は全てを見透かしているようで、何だか怖かった。

「僕は、斉木家とは綾とのつながりでよく内情は分かってるつもりだけど。
皆、親切で本当にいい人だよね…
だからこそ、僕みたいな平凡な人間は、そんな人達のようになりたいと思う。
でも、どう頑張ってもなれっこないんだ。
ひがみとかそんなんじゃない。
生まれた時点で違うんだよ。

もう、これ以上言わなくても、麻里ちゃんはちゃんと分かってると思うけど」

平塚さんが私のために用意してくれた最上級のレストランも、平塚さんの地位も名声も、それは平塚さんが努力して勝ち取った賜物。
生まれた時からついてきてわけではない。

「凛太朗君の言い分も、麻里ちゃんの言い分も、ちゃんと聞かせてもらった。
僕は、麻里ちゃんとは、男と女のつき合いうんぬんよりも、もっと心で繋がりたいと思ってる。

麻里ちゃんの心に寄り添いたいと思っただけ。
それは僕にしかできないと思ったから」




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