シンデレラは騙されない
星矢君の表情に悲しみは見えるけれど、でも、綾さんの帰りを思いすぐに笑顔になった。
「うん、大丈夫!
お母様が帰ってくるんだもん。
凛太朗がいないのは寂しいけど、でも、大丈夫だよ」
星矢君のその言葉を聞いて、凛様は星矢君の小さな手とハイタッチする。
「じゃ、下に行って、お父様に頼んでお母様に電話しておいで。
早く帰って来てって、お母様に伝えなきゃ。
その後に、一緒にお風呂に入ろう。
了解?」
今度は星矢君の方から凛様にハイタッチをする。
そして、お母様の帰国が嬉し過ぎる星矢君は、スキップをしながら下へ下りて行った。
久しぶりに二人きりになった。
凛様が日本を離れるという事実に、私は動揺を隠せない。
「麻里は大丈夫か?
俺がしばらく居なくなっても…」
私はうんと頷いた。
というか、頷くしかない。
「明日は忙しくて夜が遅いから、今日、ちょっとだけ麻里の部屋へ行っていい?」
「え、私の部屋に?」
凛様は我慢できずに私を抱き寄せた。