シンデレラは騙されない
「大丈夫だよ。
ばれた時はそれでいいって思ってる。
っていうか、ばれないように来るから。
あそこは元々俺がいた部屋なんだから、絶対にばれないで入る自信がある。
だから、部屋の鍵を開けて待ってて」
凛様はそう言うと、無理やり自分の体を私から引き離す。
「星矢を風呂に入れて、寝かしつけたら必ず来るから。
長居はしない、約束するよ」
凛様の白いシャツはいつもいい匂いがする。
私の中でもう絶対的な存在になっている凛様を、拒否するなんてあり得ない。
「…うん」
最近、髪が伸びてきた凛様は、いつも前髪をかき上げる。
その度に、凛様のすっきりした目元がはっきりと見える瞬間が私は大好きだった。
そんな凛様はまた髪をかき上げ、そして、私に笑いかける。
三日月がひっくり返ったようなこの凛様の優しい眼差しを、私は絶対に忘れない。
そんな後ろ向きな事を思う自分が、不思議で何だか怖かった。