シンデレラは騙されない
もう夜中の12時を回っている。
凛様は来ないのかもしれないと思ったその時、遠慮がちにドアが開く音がした。
私が入口まで駆け寄ると、凛様は籐のバスケットを大事そうに抱えている。
「凛様、何を持ってきたんですか?」
グレーのスウェットの上下に洗いざらしの髪。
凛様にとっては何気ない恰好だけど、セクシー過ぎて私の胸はときめきが止まらない。
「ワインに、ちょっとしたおつまみ」
私はすぐに清水さんの手作りだと分かった。
紙皿に載せられたオードブルに清水さんの愛情が込められている。
凛様は自分の部屋のように私の部屋へ入って来る。
そして、テーブルにバスケットを置くと、すぐに私を抱き寄せた。
「長居はしないって約束するよ」
凛様は聞いてもいないのに、自分に言い聞かすようにその言葉を繰り返した。
そして、はにかみながら、頭が変になりそうな熱烈なキスを何度も重ねる。
私は理性が飛んでしまう前に、必死に凛様から顔を離した。
「凛様、オードブルにワイン…
乾杯するんでしょ…?」