シンデレラは騙されない
本当は帰ってほしくない。
本当はタイなんかへ行ってほしくない。
言葉にできない想いが、凛様へ優しいキスの雨を降らした。
凛様は嬉しそうにその雨を満喫している。
そして、私がひと息ついた時、今度は凛様からの逆襲が始まる。
お互いの想いは膨れ上げるばかりで、どんなにキスをしてもどんなに体を絡めても、満たされる時は来ない。
でも、それでも、私達は抱き合った。
お互いの吐息や胸の鼓動や、愛してるという真実の言葉を忘れないために。
「麻里…
あともう少しだから…
星矢の受験が終わったら、俺達は堂々と会えるようになるから。
俺は何があっても、麻里を裏切らない。
一生、麻里だけを愛し続ける。
もし、不安になりそうな時が来たら、俺のこの言葉を思い出して。
その前に、毎日、必ず電話する。
本当はあんまり好きじゃないけど、毎日ビデオ電話をしよう。
麻里の顔が見たいからさ…」
凛様はそう言って、私のおでこにキスをした。
シングルサイズのベッドは二人が寝るには狭いけれど、今はこの狭さがちょうどよかった。