シンデレラは騙されない
私はお手伝いさんの山本さんの後ろをゆっくりと歩いている。
本当は、綾さんが私の部屋まで案内してくれるはずだったのだけれど、あの凛様が現れたおかげで、家族は、皆、凛様に夢中になっている。
私は凛様になんか夢中にならない。
私まで凛様に夢中になってしまったら、この家は崩壊してしまう。
自分を悪魔と名乗ったあの男を、簡単に信用しちゃいけない。
「ここが麻里さんの部屋になります」
そこは母屋から少し離れた場所にあるコテージの様な部屋だった。
平屋造りで中は2DKもあるゆったりとしたお洒落な空間だ。
「素敵…」
本当に素敵だった。
白を基調とした部屋の雰囲気は、南国を思わせる解放感と爽やかさを思い出させる。
「この間まで、ここは凛様のお部屋だったんですよ。
凛様はあまり家には帰らない人なので、それに帰って来る時は夜中だったりして、なので、気を遣わないこの部屋へ勝手に移動したんです」
ふ~~ん。
私は、この際、お手伝いの山本さんに、この家の内情を聞く事にした。
「凛太朗さんって、働いていらっしゃるんでしょうか?」