シンデレラは騙されない


「そういう詳しい事は、私にはあまりよく分からないけど、でも、聞いた話では、凛様のバンドが27歳までに芽が出なかったら、バンドは辞めるっていう約束をしているみたいです。

その後は、きっと、HAKASEの主力として働くのではないでしょうか?」

私はその話を聞いて、ほんの少しだけ自分の中で納得できた。
そういう約束があるから、会長達は温かい心で見守っているのだろう。

「そうなんですね…
それで納得できました…」

私は急に疲れが出たみたいで、モスグリーン色の大きなソファに腰を下ろす。

「前に一度、凛様がこの部屋でギターを弾いてご自分で歌っている所に、私、何も考えずに入っちゃった時があるんです。
そしたら、凛様が、ちょうど良かった、山本さん、僕達のバンドの新曲を聞いてくれる?って」

その時点で、山本さんの顔は真っ赤だ。

「私だけのために凛様は新曲のバラードを唄ってくれて、凛様の声ってちょっとハスキーじゃないですか?
もう、すごくすごく良くて、今でも、思い出すのがもったいないくらい…」



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