シンデレラは騙されない


俺はそんな山本さんに優しく微笑みかける。
今は何も言えないけどどうか俺の事を信じてほしいと、心の中で囁きながら。

そして、清水さんは気丈に厳しい顔で俺を見ている。
俺には、負けるなって言っているのが分かった。
小さい頃から、清水さんのその顔に何度も救われてきたから。
俺は清水さんにも微笑みかける。
母親代わりの清水さんには、きっと何もかもお見通しだと思うけど…

「リビングに誰がいる?」

ちょうど夕飯時だし、誰かは居るだろう。

「凛様…
今晩は、皆さま、揃ってらっしゃいます。
今日は特別に旦那様まで」

清水さんは的確に情報を提供してくれる。

「父さんも?」

清水さんは大きく頷いた。
俺はこの最高のタイミングに、運を味方につけた気がした。
子供の頃から、父さんは、唯一、自由に憧れる俺のたった一人の味方だったから。

すると、奥の方から、俺の声を聞きつけた星矢が興奮気味に走って来た。

「凛太朗が帰ってきた!」





< 247 / 290 >

この作品をシェア

pagetop