シンデレラは騙されない


そう言って、俺に抱きついてくる。
俺は星矢を高々と抱き上げた。
そして、いつものようにクルクルと回ってみせる。

「星矢、合格したんだって。
おめでとう~~」

星矢は嬉しそうに俺の首に腕を絡めてくる。
でも、すぐに顔を離して、俺の目をじっと覗き込んだ。

「合格したけど、全然嬉しくないよ…
だって、麻里先生に、合格したって言えてないんだもん。
麻里先生が、一番喜んでくれるのに…」

俺も泣きそうになった。
俺だって、麻里の喜んだ顔が見たいよ…

俺は星矢を抱えたまま、リビングへ向かった。
早急且つ迅速に…
時間をかける事は絶対にしない。
時間をかける事になれば、俺自身負けを認める事になるから。

「ただいま」

俺は普通を装ってリビングの中へ入った。
父さん以外の人間は、俺を見るなりそわそわと目が泳ぎ出す。
俺はそんな三人を見てほくそ笑む。
こんな表情を麻里が見たら、凛様、いけません!って怒られそうだけど。

「父さん、久しぶり。
どうしたの? 今日は?」




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