シンデレラは騙されない
「父さん、そんな俺がだよ、今では頼もしい三代目って言われてるんだ。
頭脳明晰、三か国語堪能、そして何より新進気鋭の仕事ができる奴って」
父さんは更に豪快に笑った。
「そんな事自分で言っちゃ、お前の評価はがた落ちだぞ。
でも、ちゃんと父さんの耳にも入ってくるから、多分、本物なんだろうな」
そして、俺は、今のHAKASEグループの現状について話し始める。
一昨年から去年にかけて実施した国内の工場撤廃、そしてそれに伴うリストラ、今、アジア圏に手掛けている工場の進出、全てが上手くいっているとは思えない現実を、ここにいる家族に説明する。
俺は、この会社を存続させるために必要な事柄を皆にぶつけた。
半年近くで、相当、勉強した。
現場に足を運び、現場を見ない上の世代の上層部に、今の現況をデータ化し簡潔化した資料を配り何度も説明してきた。
そういう三代目のボンボンに、皆、意外性を抱いて、今では斉木凛太朗として認めてくれている。
そんな事まで説明しなくても、家族の耳には入っている事だろうけど。
父さんも母さんも感心した目で俺を見ている。
母さんに関しては、今までのぐうたらの俺を思い出しているのか、瞳に涙を溜めていた。
そして、俺は本題を切り出す。
手加減はしない。
これからの言葉が全て真実だから。