シンデレラは騙されない
「麻里先生は、本当にいい子だった。
凛太朗の言うように、真面目で気遣いができて、そして優しくて素直で…
ここにいる皆、麻里先生の事が大好きだったもの。
でも、でもね…
凛太朗の結婚相手ではないの。
この家を継いでいく人間には、それに見合った人がいる。
麻里先生に欠点なんて何一つない。
だからこそ、彼女には他の場所で幸せになってほしいと思った。
凛太朗…
それもこれもあなたのため…
立派な三代目となって大きく羽ばたくためには、必要な事なのよ」
くだらな過ぎて反吐が出そうになる。
俺がさっきまで話してきた事をちゃんと聞いてたのか?って、耳を疑いそうになるくらい。
「俺のためなんて、綺麗事を言わないでほしい。
HAKASEのためだろ?
もっと言えば、この斉木家のため。
もう、母さん、いいよ。
俺達はこうやって、俺が子供の時から、結局は同じ話題を堂々巡りしているだけなんだ。
でも、今度は違うから。
俺ははっきり言って、この家や会社なんてどうでもいい。
全ては麻里のために、この半年間、一生懸命働いてきた。
麻里にとって、働かない男はあり得ない。
それも目の前にある仕事を放っておく人間なんて、絶対に許せない。
俺はそれだけのために働いてきた。
そういう事なんだよ、母さん…」