シンデレラは騙されない


父さんは黙って目を閉じて聞いている。
綾は相変わらず泣いていて、義兄さんは厳しい顔で俺を見ていた。

「そういう事って…?」

母さんだって、基本は意地悪い人間じゃない。
この家に生まれて、この家の決まりに則って生きているだけ。
でも、だからって、俺や麻里の人生を操る権利なんてない。

「俺は、麻里の弟の受験が終わったら、麻里と結婚する。
本音を言えば、この家族の一員として麻里を迎え入れてほしいけどそれが不可能なら、俺はこの家とは縁を切る。
仕事も12月いっぱいで辞める。

でも、もし、麻里の事を俺の結婚相手として迎え入れてくれるのなら、俺はHAKASEの三代目として、今のままこの会社で働き続ける。
HAKASEがこれ以上に繁栄するように、必死に頑張るよ。

母さん、こういう事なんだ。
俺は麻里さえいればいい。
家族も会社も何も要らない。

でも、麻里は、この家族から俺を奪う気はないんだ。
俺は麻里の幸せだけを優先する。
麻里の幸せは、この家の人達に認められて祝福されて、俺と結婚する事。

でも、それができないのだったら、俺にとって、この家も仕事も何も意味を成さない。
それは、今までの俺を見て、よく分かってるでしょ?」



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