シンデレラは騙されない


すると、義兄さんが初めて口を開いた。

「凛太朗君、それは取り引きかい?
麻里ちゃんとの結婚を認めてくれれば、この家を継ぐという」

義兄さんは一人だけ冷静だ。
そして、いつでも麻里の肩をもっている。

「どうとでも思って下さい。
でも、俺にとっては損得なんて発生しない。
どう転んでも俺は麻里と結婚するし、それ以上欲しいものなんて何もないですから」

険悪なムードが漂う中、星矢の大きな声が部屋中に響き渡った。

「僕は、凛太朗のお嫁さんは、麻里先生がいい!
絶対に、麻里先生がいい!」

すると、そんな星矢を父さんが抱きかかえた。

「そっか、星矢は麻里先生がいいか~
おじいちゃまも麻里先生がいいな。
どうしてだと思う?

それは、凛太朗が本物の愛を見つけたからだよ。
中々、そういう人には巡り合わない。
そんな人に出逢ってしまったら、絶対に結婚しなくちゃいけないんだ」

俺は泣きそうになった。
子供の頃から、こうやって父さんは俺を守ってくれた。
子供の個性を潰すなんてもったいないって言うのが、父さんの口癖だった。
大人になった今でも、父さんは何も変わらない。



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