シンデレラは騙されない


「僕も、おじいちゃまの家に泊まりたい!
凛太朗、僕も連れて行って」

星矢は目をらんらんと輝かせている。
父さんの家にはペットの犬が二匹もいるから、星矢にとっては最高に魅力的な場所だった。

俺は綾の方を見る。
星矢を連れて行っていいなら連れて行こうか?と聞こうかと思って。
でも、まだ、相変わらず綾は泣いていた。
何をそんなに泣く必要があるのか俺にはさっぱり理解できないけれど、泣いているから聞くのは止めた。

「今日はもう遅いし、それに、明日は幼稚園だろ?
週末に遊びにおいで。
皆が忙しいのなら、俺が迎えに来てあげるから」

星矢がしょんぼりしていると、義兄さんが俺に話しかける。

「凛太朗君はいつまで日本にいるのかい?」

「そんな長くはいません。
用事を済ませたら、すぐに帰ります」

俺は自分の荷物を肩に担いだ。
父さんは星矢の頬にキスをして、よっこいしょと立ち上がる。



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