シンデレラは騙されない
「母さん、そういう事だから…
だから、12月中には返事をちょうだい。
ダメならダメでいいからさ。
どのみち、俺は3月には麻里と結婚する。
もし、母さん達が認めてくれるのなら、盛大な結婚式を挙げたいって思ってる。
母さん達が思う通りのやつをね」
母さんは大きくため息をついた。
「あなたには婚約者がいるのよ…」
俺はその言葉で、母さんに何も伝わっていないと確信した。
「俺に婚約者なんていないよ。
そんなのそっちが勝手に考えている事だろ?
俺は、一度も、首を縦に振った事なんかない」
もうこれ以上話すのは無駄だと思った。
俺の言葉を後で思い出して、ゆっくり精査してくれればいい。
どういう返事でも、俺はしっかり受けとめるつもりだから。
母さんはうなだれて体調が悪そうだ。
俺は、ソファでくつろぐ父さんに話しかけた。
「父さん、今日は車で来てる?」
父さんはそうだよと軽く頷く。
「俺は父さんの家に泊まるから。
この家には、今は俺は居ない方がいいみたい。
その方が、母さん達もゆっくり考えられるからさ」