私は強くない
これから…
どれくらい時間が、経ったんだろう。
長く感じられた時間も、あまり経っていなかったみたいだった。

落ち着いた私に名取課長は何も聞かず、ただ偶然、拓真と会うと分かって、心配だったと。
なかなか仕事が終わらなくて、無理矢理終わらせて、慌てて会社を出たと。
そしたら、あの場面に出くわしたらしい。

「…で、あれは誰なんだ?まさかとは思うけど」

「あれって、一緒にいた?」

「そう、女」

「あの女性ですか?噂の彼女です。実は、拓真に会う前に、待ち伏せされてたんです」

名取課長には、言うつもりはなかったが、あの現場を見られてしまったなら、隠すのはよくないと思って話をした。

話していると、名取課長の顔色が変わるのが、分かった。

「怒ってますよね?」

恐る恐る聞いてみる。

「当たり前だろ。だが倉橋に怒ってるんじゃない。あの2人に怒ってるんだ」

ぶつぶつと、何かを考えている名取課長に、私は話があるから家に来て欲しいとお願いをした。

もう、待ってられない。
今言おう、そう思ったから…

名取課長は、何も言わず家まで来てくれた。
ソファに座り、どうした?と。

「名取課長、プレゼンが終わるまで、話するのはよそう、我慢しよう、って思ってたんですが、こんな事になって…。もうこれ以上、混乱したくないし、名取課長に迷惑をかけたくないんで…」

「…迷惑じゃないって、言ってるだろ」

「名取課長、聞いて下さい。私、こんな事になって、自分自身混乱してました。名取課長への気持ちも、拓真に振られて動揺してるんじゃないか、とか。名取課長の優しさに勘違いしてるんじゃないか、とか。けど、ここ数日の事で、私気がついたんです」

「倉橋…」

黙ったまま、話を真剣に聞いてくれている名取課長が、私をとらえて離さない。

大きく、息を吸った。
そして、ゆっくり息をはいた。

「私、名取課長の事が好きなんです。勘違いなんかじゃない、一人の男性として、好きです。この気持ちが迷惑だっ……」

最後まで言えなかった。
言おうとした私を優しく名取課長の口が塞いだ。

「…ん…っ」

優しく何度も角度を変え、そして激しく…

「はぁ…っ…名取課長」

息づきが、出来ない。

「倉橋、先越されてしまったな。俺も好きだよ。お前の事が。ずっと前からな、もう誰にも渡さないから、覚悟しろよ?」

そう言って、私を抱きかかえ寝室に連れていった。
そして、優しくベッドに横たわらせた。

「いいか?嫌なら今だぞ?今日の俺は優しく出来る自信がないから…」

私の心は決まっていた。
名取課長でいっぱいにして欲しかった。
何もかも忘れさせて欲しかった。

「名取課長…いっぱいにして…」

「倉…慶都、ずっと名前を呼びたかった」
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