私は強くない
東和堂へのプレゼン当日。

昨日は緊張で、なかなか寝付けなかった。
圭輔さんとは、プレゼンが間近だったのもあり、あの夜から距離をおいていた。それは、圭輔さんからも今日の為と、言われていたから…


今日で全てが決まる。

拓真は、あの日以来人が変わったようだった。
このプレゼンに賭けているのだろう。
あの後、二人がどうなったかななんて、私には関係ないから気にもしていなかったんだけど、実はあれから何回か浜口香里から電話がかかってきていた。

この事は、圭輔さんにも美波にも言っていない。




あの日の後、登録していない番号から電話がかかってきた。
私は基本登録した番号しか出ないんだけど、何回もかかってきていたので電話に出た。

「もしもし…」

「……」

無言電話?嫌がらせか、そう思って切ろうとした、

「浜口…香里です」

!!!!

「…どう…してこの番号…」

「………拓真さんの携帯見たんです」

「…何の用かしら?」

「お話があるんです」

「私にはないけど?この間の事であなたも分かってると思ったんだけど?これ以上は私から言う事なんてないから」

「…………」

私には関係ないことなのに、なぜ?
浜口香里が何を考えているのか、さっぱり分からなかった。
拓真と話する気もなかったし、ましてら浮気相手の言う事なんて、と思い、それだけ言って電話を切った。

なのに、次の日も、また次の日もかかってきていた。

私は無視した。



このまま無視しようと思っていた。

圭輔さん達に、話する程の事じゃないと思っていた。


私はこの後、話しておけばよかっと後悔した。

無視してから、浜口香里からの電話がなくなり、その事も頭から消えようとしていた。

何もなかった、と思っていた。

プレゼン前日の事だった。

「倉橋さん」

会社の近くで、帰り道、私は浜口香里に声をかけられていた。
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