独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
今日は良い天気なのだろうか。
ベッドサイドにある窓にかけられた遮光カーテンの隙間から明るい陽射しが微かに射し込んでくる。そもそも今は何時くらいなのだろう。

「ちょっと橙花ちゃん! どういうこと!」
ノックもなく、バンッと勢いよく部屋のドアが開いて、怒りの表情の姉が飛び込んできた。

「お姉ちゃん……?」
普段おっとりしている姉のこんな様子は珍しい。驚いて彼女の顔を凝視する。

「婚約ってどういうこと!? 聞いてないわよ‼」
その大声に驚く私。姉は私を不機嫌に睨みつける。大きな瞳を眇めて怒る姉の姿は迫力がある。

「お、お姉ちゃん、いきなりなんで……」
そもそもなんで私の代理婚約を知ってるの!?
「誤魔化そうったってそうはいかないわよ。しっかり聞いてきたんだから!」

誰に聞いたというのだろう。
姉はずかずかと部屋に入り込んで、私のベッドの上にドサッと腰かける。

「お姉ちゃん、今日は土曜日だよ? デートじゃないの? そんな大声で叫んでいたらお母さんに怒られるよ?」
彼女の気を逸らすように、おずおずと問いかける。

姉は大抵休日はデートで不在だ。今日もその予定だと思っていた。バルーン袖のブラウンベージュのワンピースにゴールドの大ぶりのピアス、小さめのショルダーバッグ。完璧にデート仕様の装いだ。
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