アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
平安の都から来る。そんな奇怪な話を信じているのかどうか、アラキは自分でもよくわからなかった。

ただ言えるのは、彼女が奏でる琴の音はどこまでも優しく心に響くということ。
闇を祓い、聞く者に生きる力を与えるかのように奥底に沁みていく。そんな音を出せる女性が、西園寺家に災いを呼ぶだろうか?
仮に平安の都から来たとして、良くない存在だと言えるだろうか? そうは思えなかった。

アラキが知りたいのは、碧斗に聞いたとおり、彼女が消えてしまうのか否か、それだけである。
いずれ消えてしまうということであれば、今のうちに手を打たなければならない。その時こそ、西園寺で雇うことなどできない。

『それは、アスカが決めること』

今年の十五夜は、十月だ。
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