アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
それは嘘じゃなかった。全てが楽しい。
何しろ平安の都で、貴族の姫が働くことはとても限られていた。宮中で女官になる他は道がない。こんなふうに働きたいという理由だけで、女性でも仕事をできるということがどれほど幸せなことか。

でも、飛香はその思いを口にはしなかった。

兄からは、秘密を打ち明けたと聞かされている。でも、洸は一切そのことを口にはしないし、飛香自身も知らずしらずのうちにその話は避けている。

それでも話は尽きない。
ついさっき見た映画の話や、スーパーでの買い物をした時の話。あっという間に時間は過ぎた。

「そろそろ準備しますね。今度は私の番です。洸さんは待っていてください」

「はーい。よろしく」

洸はキャビネットから雑誌をいくつか取り出してローソファーに腰を下ろす。

いつの間にか流れている音楽は、明るく穏やかで心地よく耳に響いてくる。

ーーさて。
飛香は材料を並べて、手順を考える。
調理してそのままテーブルに出せる鋳物の鍋をいくつか取り出した。

そうするうちにも自然と顔がほころんでくる。
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